絵本レポート

あ、読んでみたいな。と思ってもらえる絵本紹介を目指してます

4歳からのオススメ絵本 『3びきのくま トルストイ』 社会の常識教えてくれる

こんにちは。今回ご紹介するのは『3びきのくま』の、トルストイバーションです。

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『3びきのくま』はイギリス民話です。だから、何人もの作家が絵本にしています。お話の大まかな流れは似ていますが、スープがお粥に変わったり、最後に3匹のくまとのやりとりが変わったりと作家独自の改訂ポイントがあります。

私も『3びきのくま』のお話は知っていましたが、記憶にあるのはトルストイ作とは少し違った内容でした。

別の作家さんの『3びきのくま』も興味深いですが、今回はトルストイバージョンでよろしくお願い致します。

目次

感想

んー?この感覚、どこかで味わった気がするぞ?

と思って記憶を掘り起こしたら、実家で住んでいた時に鼬(いたち)が侵入してきた時のそれでした。

部屋に入った瞬間、
あれ、何か臭いが違う。なに?何か入ってきた?
あ!洗濯ものしわくちゃ!どいつがこんなことした!?
おったー!鼬(いたち)やったんか!コラ待て逃げるな!!
そうです。私が熊です。

留守中の家に忍び込んで勝手にご飯を食べて椅子を壊して勝手にベッドで寝て、見つかったら何も言わず全力で逃げた女の子。

女の子がした事はかつて我が家に忍び込んだ鼬(いたち)そのまんまです。
そんなわけで、『3びきのくま』を読んだ私はしばらく頭が混乱していました。

人間が動物っぽくて、熊が人間っぽい・・・いやでも、やっぱり熊も動物っぽい。ええと・・動物と動物の話でええの?

どうしようもない違和感を覚えながら読み聞かせをしました。
6歳の娘ではなく3歳の息子に読み聞かせていたら、私は今でも変な違和感にとりつかれたままだっと思います。

読み終わり、娘が「女の子にげれてよかったね」と一言言いました。そして、続けて言った感想で、私はこの絵本の真理がやっと理解できました。
「ヒトの家に勝手に入っちゃだめだよね」

それだ!それ!私達大人は、当たり前に他人様の家と公道の境界線を見分けられるけど、子供はそうじゃないんだった、と。

つまり、大人は知識と経験があるから、自分が足を踏み入れてよいOKゾーンと用があれば入る事もある庭先などのグレーゾーン、そして黙って入ったら警察沙汰になるNGゾーンが自然に分るんです。逆に言うと知識も経験も浅い子供はこのゾーンが分らない。
下手したら悪気なく入っちゃいます。

そういえば今3歳になる息子もつい最近まで、普通に他人様の家の敷地内に入ろうとしていました。その都度、「そこは駄目。ひとんち」と教えていました。
この『3びきのクマ』人間社会の常識をまだ熟知していない子供の為に、人間の常識の基本を教えてくれていたんですね。

絵本の舞台が熊の家だったのと女の子と鼬を重ねて見てしまっていたせいで、大事な所を失念していました。
そうだよ。人間社会でこれやったら警察に捕まるよ。

ひとの家に勝手に入った時点で家宅侵入罪
勝手にスープを食べたから窃盗罪
椅子を壊したから器物損害
勝手にベッドで寝たのは・・・まあいいや。
つまりは立派な泥棒さん。

ありがとう、娘よ。
『3びきのくま』、息子にもちゃんと読んでやらんとな。

『3びきのくま』の本の特徴

サイズと重量(重さ)

縦27.7cm 横22.8cm 厚さ8㎜ 重量359g
やや大きく重いですが、これ一冊くらいであれば持って歩くには負担にはならないと思います。

読み終わるまでの所要時間

5分程度

文字のサイズ、読みやすさ

最小3㎜。殆どは4㎜程度です。

構造・質感

ハードカバーの、標準的な絵本です。

対象年齢

4歳から、とネットにはありました。

『3びきのくま トルストイ作』のオススメポイント

一つは先程感想で書かせて頂いた通り、小さな子供に人間社会の常識を教えてくれるという点。

勝手にひとんちに入っちゃ駄目よ。ベルならして玄関開けてもらわないと入っちゃ駄目。
大人の人に「どうぞ」とも言われてないのに勝手に食べちゃ駄目。冷蔵庫も物置も開けちゃ駄目!
勝手にイスに座っちゃ駄目。許可をもらってから。
物を壊すなんてもってのほか。
勝手にベッドで寝ちゃ駄目。そもそも寝室に入るのはマナー違反。
帰る時は一言お礼を言ってから帰る事。
もし何かしでかしたらきちんと謝ってから帰ってこい。ほんで報告も忘れずに。

友達の家に行ったときとか、これ大事!
『3びきのくま』を読んだついでに、ちゃんと教えなくちゃ、と改めて思いました。

それから、これはトルストイ作『3びきのくま』の特徴なのかもしれませんが、熊3匹が少し恐く感じるよう書かれています。
例えば、お父さん熊が「だれだ、わたしのおわんのスープをのんだのは」と怒るシーンですが、『言った』ではなく『ほえた』という言葉が選ばれています。
この『ほえた』が本文に緊迫感と迫力を出していると私は感じています。
女の子を見つけた小熊がすかさず噛みつこうとするところなんかは、流石熊!と言いたい。
『3びきのくま』youtubeなどでも紹介されていますが、作者によっては獣人のような印象を受ける優しい作品になっています。
トルストイ『3びきのくま』はそれと比べると実に動物らしい。だから余計に動物っぽい行動をする女の子との境界線があいまいになって、作品に不思議なムードを醸し出していると感じます。
でも、そこがちょっと面白かったりするんです。
この独特なムード、是非味わって頂きたいです。

『3びきのくま』の情報(作者・発行所など)

タイトル:3びきのくま
文:トルストイ
絵:バスネツォフ
訳:おがさわら とよき
発行所:株式会社 福音館書店