3歳からのオススメ絵本 『かえってきたきつね』 清々しい余韻に浸れる
こんにちは。今回ご紹介するのは『かえってきたきつね』
『かえってきたきつね』は図書館で息子がどこからか持ってきた一冊です。
表紙絵は正直、私の好みではなかったのですが、実際読んでみると、人間が預かり知らない動物たちの密だけど親密すぎない関係に心を持って行かれました。
兎にも角にも『かえってきたきつね』を持ってきてくれた息子に感謝です。
こういう驚きと思いがけない出会いがあるから図書館での絵本漁りはやめられませんね。
目次
感想
峠のてっぺんにある大木。こずえに一匹のモモンガが住み、幹にキツツキがあけた沢山の穴には小鳥たちが住み、根元には一匹の狐が住んでいる、動物で溢れた不思議な木です。
種族の違いはあれど、それぞれが互いの存在を認め合いながら生活しています。
ある日、狐が人間に捕まってしまいました。
モモンガは心配になり狐を探します。そして、狐の無事を確認すると鳴き声を上げ、鳥たちに狐の無事を伝えに帰りました。
狐は木の根元に帰るため、人間達が寝静まると一生懸命に穴を掘りました。
というのがざっくりした粗筋です。
読み終わりに不思議な余韻を残す絵本だと感じました。透明感、とでも言えば良いのか・・・私の少ない語彙では表現できません。
清々しさ、一番が近いのかな?
野生の澄んだ部分とファンタジー要素が折り重なった美しい絵本です。
読み終えると娘が
「ありがとうございましたー」
とお礼を言ってくれました。
続けて
「おもしろかったー」
どこが面白かったか訊ねると、
「んー・・・?ぜんぶー」
娘はよく私をハッとさせる感想を言ってくれるのですが、今回のコメントはアバウトでした。
けれどよく考えてみると、この絵本はお話を楽しむというよりは絵本が作り出している雰囲気を楽しむ方が正解なのかもしれません。そう考えると娘の感想が大雑把になるのも頷けます。
『かえってきたきつね』では人間も登場しますが、人は動物たちの世界のはしっこに位置していて、あくまで一本の奇妙な大木を中心にした野生の世界で語られています。
その世界観が『かえってきたきつね』の独特の澄んだ雰囲気を作り出しており、何がとは明言できないけれども、読者に「おもしろかった」と言わせる力を持っているのだと思いました。
『かえってきたきつね』の、本の特徴
サイズと重量(重さ)
縦25cm 横26.4cm 厚さ1㎝ 重量432g
ママかばんには入らないわけではありませんが、持ち運ぶとなると少し負担に感じそうです。
読み終わるまでの所要時間
5分程度
文字のサイズ、読みやすさ
5㎜程度です。
黒文字。
構造・質感
ハードカバーの、標準的な絵本です。
対象年齢
3歳から、とネットにはありました。
『かえってきたきつね』のオススメポイント
透明感の正体の一つに、まずは、狐の存在が美しい事が上げられると思います。
住まいを同じくする小鳥やそれらの卵や雛を襲う事はせず、日がな一日散歩に出ており帰っては夕焼けを眺め、たまに大きなあくびをする。まるで好々爺じゃありませんか。
檻から必死の思いで巣穴に逃げ帰ってきても、騒ぐ事無く何事もなかったかのように、いつもの大あくびをするだけ。
狐に台詞はありません。
そういった狐の静かで強い存在感が読み手の心を掴むのでしょう。
また、ニワトリを獲って喰う狐が人間に捕まってしまうエピソードは田舎ではよくある話です。けれども、そこに賢く静かな狐と、騒がしい小鳥の集団と、愛らしいモモンガの友情という要素が加わる事で見事に一つのドラマティックな物語が出来上がっています。
賑やかなのですがガチャガチャした感じのない清楚な絵本だと感じました。
物語の余韻が心地いい一冊です。
作者:岸田衿子さんについて
岸田衿子さんは詩人であり童話作家。
なんと、あの岸田今日子さんのお姉さんです。
岸田今日子さんといえば『御家人斬九郎』の大食らい婆さんではありませんか!大好きだったんですよ。
お亡くなりになったのが残念です。
衿子さんも2011年にお亡くなりになっています。
岸田衿子さんは『世界名作劇場』のアルプスの少女ハイジやフランダースの犬、アライグマラスカル、赤毛のアンなど、タイトルを聞いたら同時にテーマソングも浮かんでくる有名作品の主題歌の作詞を手掛けられています。
そんな岸田衿子さんの著作は楽天ページで検索すると、このブログで今まで紹介してきたスタイルでは載せきれないほど多くあります。
ちなみに、『かえってきたきつね』で挿絵を担当された中谷千代子さんとは親友らしいですよ。
親友と共同作品の絵本を出すって素敵ですね。